英シルバージュエリーブランドのCRAZY PIG DESIGNSは3月でオープン26周年を迎えた。前々回と前回はアーマンド・セラのインタビューをお届けしたが、今回はアーマンドの古き友人で、CRAZY PIGのスーパーファンでもあり、同店最初の顧客であるノミス氏に話をうかがった。
ノミス氏とはアーマンドの紹介で知り合い、かれこれ15年以上の付き合いになる。北イングランドにある彼の自宅を何度か訪ねたことがあるが、そのシルバージュエリーコレクションは思わずため息が出るような素晴らしいものだ。早速、私は彼にメッセージを送った。
―やあ、ノム(ノミス氏のニックネーム)、元気でしたか。
ノミス(以下 N):ハーイ、元気ですよ。今夜はマンチェスターへギグを観に行くんだ。
―元気そうで何よりです。(ノミス夫妻は年間100本近くのコンサートを観に行く)。さて、CRAZY PIGの開店26周年記念ということで、今日はファーストカスタマーであるあなたの話を聞かせてください。
N:ああ、いいよ。
―まず、アーマンドとはいつ頃知り合ったのですか。
N:最初に彼と会ったのは1979年の12月だったと思う。ギグを観るためにロンドンへ行き、彼が働いていた店GREAT FROGのあたりをいつもブラブラしていて、店のショーウインドを眺めていたんだ。でも、その頃は何かを買う余裕はなくてね。ロンドンへ行った時はすぐにその店を訪れて、アーマンドと話していたんだ。80年代後半まではそんな感じだったよ。40年も前のことだからね、もう記憶が曖昧だけど、多分そうだったと思う。
―アーマンドとはどのようにして仲良くなったのでしょうか。
N:GREAT FROGのオーナーらと知り合い、そしてアーマンドやジャネットとも知り合った。アーマンドのバンドPANAMAのギグにも何度か行ったことがあるよ。彼の作業場に泊めてもらったこともあったね。
―あなたたちの友情が垣間見えます。そこで最初に購入したアイテムは何でしたか。
N:最初のアイテムはEvil Skull ring、それとスパイダーのリングとペンダントだった。その頃、俺はビジネスで成功して、カミさんといろいろ買い始めたんだ。そこにはGavinという職人もいて、俺がいつも着けているヘビのバングルは彼が作ったものさ。
―これまでどのようなものを購入しましたか。
N:今までに何を買ったかなんてちゃんとは覚えていないよ。金があったらすぐに何か買っちゃうからね。アーマンドの作品、特に彼が作るスカルが大好きなんだ。そうそう、ファンタスティックなダガーを持っているよ。本当は某ミュージシャンのために作ったものだったんだけどね。
―あなたの素晴らしいコレクションはまたどこかで紹介したいと思います。さて、その後、アーマンドは1992年3月にCRAZY PIGをオープンさせましたが、その日のことは覚えていますか。
N:ああ、朝早くに俺とカミさんで出かけたんだ。確かアーマンドから10時開店と聞いたので、俺たちはその少し前に到着した。でもまだ開いてなくてね。(笑)3月初めのロンドンだから外で待つのは寒かったよ。で、店がオープンして、俺たちは中へ入った。特にパーティーのようなものはなかったね。
―その日は何を購入したのですか。
N:「XL スカルブレスレット」さ。間違いない。アーマンドがまだ前の店で働いていた頃、彼はそのブレスレットをこっそり見せてくれたんだ。でもまだ秘密だよってね。で、俺はそれが猛烈に欲しかった。あの日、他に何を買ったかなんて覚えちゃいないよ。巨大なスカルブレスレット以外にはね。
―最初に売れたアイテムがCRAZY PIGを象徴するようなアイテムだったのですね。その日の店内の様子はどうでしたか。
N:その時間帯、俺たち以外に客はいなかった。2、3時間、店内にいて、おしゃべりしたと思う。そんなところだよ。おっと、もうギグへ行く時間なんでこれで失礼するよ。できれば東京の店にも行ってみたいね。またね。
このようにノミス氏の証言によると、CRAZY PIGは開店した日から大盛況というわけではなかったようだ。その後、アーマンドとジャネットが努力を重ねた結果、26周年という日を迎えることができたのだろう。そしてノミス氏のようなスーパーファンがCRAZY PIGを支持してきたからに違いない。■■
(文、撮影・Shuhei Hasegawa)