2022年12月27日火曜日

スペシャルインタビュー2022 / アーマンド・セラ 前編

あっという間に2022年も終わろうとしています。今回はアーマンド・セラにクレイジーピッグ・ロンドン本店30周年、東京店5周年と、特別だった今年をインタビュー形式で振り返ってもらいました。

まずは前編です。

- 2022年はクレイジーピッグ・ロンドン本店が30周年、東京店が5周年と記念すべき年でした。これらについて率直な気持ちを聞かせてください。

アーマンド・セラ(以下A): 実のところ、1992年にコヴェントガーデンで店を開いてから、ありがたいことに常に忙しく時間が経つのがとても早くて、何周年というのに気づかないこともあったくらいなんだ...

日毎、週毎、月毎、年毎に新作を作り続けてきたし、明日は何をやる?来週は何をやる?来月は?来年は?という具合に、常に新しいことに取り組み続けてきたから、過ぎた時についてあまり考えることなかったというのが正直なところかな。

- なるほど。常に前に歩みを進めてきたということですね。その30年の歩みの中で特に印象深かった出来事について教えてください。5年前には東京に来ましたが、そこでの思い出についても話してくれますか?

A: たくさんありすぎるけど…オジー(オズボーン)のためにスペシャルなリングを作ったことは特に思い出深いね。彼のためにクレイジーなリングとブレスレットを作り、彼がそれらを受け取りに来たんだ。あの時使った18金は合計で750gくらいあったよ!もう一つ挙げるとすれば、キース(リチャーズ)と過ごした数時間かな。私のブロード・キャスターを貸した時だね。あれは素晴らしい時間だったよ。

東京については、なんといっても2017年の開店の時だね。それまで日本に行ったことはなかったんだけど、東京という都市やその時に来てくれたファンの皆さんにとても感銘を受けたね。街は細部に至るまで清潔で交通機関から何からオーガナイズされていて、人々は親切で全てにおいて丁寧で…こちらまで謙虚な気持ちになったくらいさ。

私は騒がしいのが得意ではないから、時折東京の静けさと人々の公共の場でのマナーの良さが恋しくなるよ。

もう一つ、『HIDE YOUR FACE RING』は外せないよね。日本の偉大なロック・レジェンドのために作品を作ることができたのは大いに誇らしく思うよ。hideを通じてクレイジーピッグのことを知ってくれた日本の人たちはたくさんいるだろうからね。あのリングとペンダントでhideファンの皆さんが喜んでくれらいいな。

- 日本を好きになってくれたのなら嬉しいです。また来てほしいです…さて、この30年での顧客の好みやトレンドの変化について感じていること何かありますか?

A: そうだね、私は世間やトレンドを追跡することにはあまり興味がないので、うちの店の客層の変化について話してみようか。90年代前半の私の店ではバイカー風の顧客ばかりだったんだ。でも、一つのジャンルに縛られることなく新しいデザインを次々と作っていったから客層はとても早く変化していったね。いまや客層に老若男女の区別なく、とても良いバランスだよ。これはデザインやテイストの多様さを示す良いサインだと思う。

- また、この30年でジュエリーづくりやデザインのプロセスやアプローチに変化があれば教えてください また、東京店の存在が作品にもたらした変化についても教えてください。

A: ジュエリーの製造に関していうと、ハンドメイドという根本は堅持持しながらも、品質向上のための技術の進化は取り入れているよ。職人が使う電動ツールとか鋳造の設備とかね。特に鋳造に関しては、品質が飛躍的に向上したよ。品質検査の合格率が格段に上がったし、地金の質もすごく良くなったね。

もちろん、すべての原型は私がデザインし、CAD等は使わずに自身の手で作ることに関しては変わりないし、これは今後も変わらないよ。

東京店の存在による変化は、そうだね、これまで以上に日本の皆さんの存在をより近くに感じながら毎日を過ごしているよ。皆さんの要望や意見などは東京店を通じてとてもクイックでストレートに上がってくるので、お得意様が特に多い日本の皆さんへのサービス向上の助けには随分となっていると思う。これは本当に良いことだと思っているよ。

- 皆様お待ちかねの新デザインについて伺います。11月にクレイジーピッグ東京店5周年を記念して素晴らしい新作が発表されました。これらについてコメントをお願いします。また、特にお気に入りの作品や作るのが難しかった作品があったら教えてください。

A: OK、では『ロストスカルリング』から始めようか。今回の新作では最も作るのに苦労したね。私はこれまでに多くのスカルジュエリーを作ってきたから、スカルを作ること自体は特に苦労することはないんだけど、この巨大さで快適に着用できる、つまりスカルジュエリーとして成立するように微妙な角度やその他多くの要素のバランスをまとめるのはそれなりに大変だったよ。

『ピースダヴペンダント』古典的な平和のシンボルをペンダントにしたんだ。「平和」ってまさに今、世界と我々が必要としているものだろ?「平和」はとても大切なものだと思う。

『リーパーピックペンダント』今回のお気に入りはこのペンダントだね。シンプルだけど他とは異なるピックのデザインで気に入っているよ。なんといっても私はギタープレイヤーだからね。

『5スターズバンドリング』東京店の5周年を記念して五つの星が並んだリングを作ったんだ。かわいらしいデザインで人気になるんじゃないかな。

『ボーンハンドイヤリング』&『ボーンズフープイヤリング』については、ピアスは作る上でデザインだけではなく、重量も大切な要素なんだけど、これら2つはデザインのユニークさやボリューム感と重量のバランスがうまくまとまったと思う。特に『ボーンハンド』の方は人気になるだろうね。

- あなたは”ロックなジュエリー”を40年間作り続けています。今後もまだまだ続ける予定ですか?我々はそう願っています!

A: 大切なことは、私自身が新たなデザインを作るのを楽しんでいるということなんだ。私としては、それが自分の運命というか、使命のようなものだと感じているよ。私がこの世を去っても私の作品を人々が求めるような、そんなジュエリーを作っていきたいな。私がいなくても私が作ったジュエリーはずっと生き残るのさ。


アーマンド・セラの「何周年というのはあまり気にしていない(覚えていない)」とい言葉は本当で、周りから「今度の3月4日はXX周年だね」と言われて「おお、そうだった」とようやく思い出すシーンを実際にこの目で何度か見てきました。

そのくらい、彼は常に新しいデザインやプロジェクトを考えながら過ごしています。その積み重ねが1200種を超えるデザインであり、競争の厳しいロンドン中心部で生き残ってきた30年なのだと思います。

後編はアーマンド・セラにとって、もう一つの(あるいはメインの???)ライフワークである音楽プロジェクトについて語ってもらいました。新アルバム『MUDHOG』で使用したギターの選び方など、興味深いエピソードを聞けました。お楽しみに!

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