2019年11月19日火曜日

ORIGINAL DESIGNS BY ARMAND SERRA

日本のファンの皆さん、いつもクレイジーピッグのジュエリーを愛用してくださりありがとうございます。皆さんの熱いサポートのおかげで私たちの東京店が2周年を迎えることができます。

今日は、私がジュエリー製作者としてのキャリア初期にデザインした名作4つの誕生エピソードを紹介したいと思います。皆様が”本物”の名作デザインをお求めになる際の参考になれば幸いです。

私がロンドンのカーナビー・ストリートにあるグレートフロッグというアクセサリーショップで働き始めたのは1982年のことです。それから2年もしないうちにいくつかの名作といわれるデザインを作っていました。新しい作品のデザインをする際は殆どのケースでは実際に立体的な原型を彫る前にいくつかのラフスケッチを行っていました。 

ウルフリング:
スイスのお客様からの「オオカミのリングはないの?」という一言が誕生のきっかけでした。当時の私の職場(グレートフロッグ)にはそのようなものは何もなかったので、私はそれを製作することを申し出ました。当時はインターネットのような便利なものはなかったので、フォイルズ(ロンドンの大きな書店)に行き、オオカミに関する本を買いました。その本からいくつかの写真を選択すると、ワックスの塊を彫刻していき、今や名作と呼ばれるウルフリングを作りました。私の記憶が確かなら、これが私にとって最初のアニマルリングだったはずです。メタリカの故クリフ・バートン氏が私からウルフリングを購入したのは1984年のことです。ジェイムズ・ヘットフィールド氏はクリフのウルフリングを見るとすぐに、このペンダントを作るよう私に依頼してきました。それを実現する最も手っ取り早い方法は、ウルフリングの後ろ半分を切り取り、裏側に紐を通すフープを取り付けることでした。こうしてウルフペンダントも誕生したのです。ジェイムズのウルフペンダントはクリフの形見から作られたという話があるようですが、それは真実ではありません。クリフが着用していたウルフリングは、大切な友人の形見として私が保管しています。あの事故の数日前にクリフの手から私の元に戻ってきていたのです。

イーヴルスカルリング:
私の頭の中に下記のラフスケッチに見られるような、がっしりとしてデザイン化された下顎のないスカルのイメージが閃きました。正方形に収まるようなスカルの輪郭、両目は単なる丸みのあるへこみではなく、もっと悪魔のように見えるような感じのアイディアでした。これにより“邪悪な”外観へとなりました。スカルには牙を含む歯も付けることにしました。数分後にはこのデザインが頭の中で完成しました。私はすぐに最初のイーヴルスカルリングの製作に乗り出しました。実際の立体で望んだ通りの結果を得ることは簡単ではありませんでした。1983年11月24日には原型(型を取り、鋳造して銀製品を生産するためのもの)が完成しました。私は最初に作成したイーヴルスカルリングを自身で長らく愛用し、それはまだ私の手元にあります。メタリカの故クリフ・バートン氏やジェイムズ・ヘットフィールド氏をはじめ、多くのロックスターがこのリングを購入していきました。

プレイグリング:
イーヴルスカルリングの滑らかさとは対照的な、人間のリアルな下顎付きのスカルを作ろうと思ったことが誕生のきっかけです。ベースとなったアイディアは1665~1666年にかけてロンドンで大流行した疫病(ペスト)で亡くなった人々の実際の頭蓋骨です。それらの多くの頭蓋骨は頭部に損傷があったり歯が抜け落ちたりしていました。このアイディアが気に入った私は、プレイグ(疫病)スカルをリングとして製作しました。このリングはメタリカの故クリフ・バートン氏も購入しました。

デスフロムアバーヴリング:
今と違って、1982年頃はスカルリング、特にクオリティの高いシルバー製のものを探すことは簡単ではありませんでした。私はロックファンに訴えかけるような新しいスタイルのスカルリングを作りたいと思っていました。その頃、ロンドンだけでなく世界中でヘヴィメタルの波が巻き起こりつつあったので、非常に精緻なスカルリングを作ることにしました。私は戦闘機のパイロットのイメージが好きでした。ヘルメットにゴーグル姿は私のお気に入りでしたし、“Death from Above(死神参上)”のスローガンは最高でした。

1982年から私の全作品には、その内側や裏側にジグザグロゴ(下記参照)が彫り込まれています。1992年にはグレートフロッグを離れ、自身の店であるクレイジーピッグ(CRAZY PIG DESIGNS)をオープンしました。1982年以来、私がこれまでデザインしてきた各アイテムは今日でも私の元にあります。すべてのデザイン画、原型、そして第一世代の鋳造品*1は今現在もクレイジーピッグの膨大な保管庫にあります。簡単に言えば、お客様は1982年から現在まで私が作ってきたオリジナルの作品を、これらの発表当時のオリジナルと同じ(型取りを繰り返すことによるディティールの劣化などが無い)状態でお求めいただけるのはクレイジーピッグだけ、ということです。

*1
クレイジーピッグでは原型をアーマンド・セラが作成し、その型を作成します。その型から複製したワックスを使用してリングなどの製品を生産しています。つまり、製品は原型の”子”であることを第一世代と表現しています。原型を持たない製造者がコピー品などを生産する場合、前述の第一世代の製品から型を作成し、そこからワックスを複製します。つまりは原型の”孫”となります。これを繰り返すことで原型のディティールは少しずつ損なわれていきますが、クレイジーピッグでは常に”第一世代”の製品を生産しておりますので、アーマンド・セラが製作したオリジナルの原型に忠実なディティールを持つ製品をお求めいただけます。
(ジュエリー製作者によって生産のアプローチは異なるため、一概に"孫"やそれ以降の型を使用する生産方法が悪いということではありません)

以下、訳者より
アーマンド・セラは非常に几帳面な人物で、ジュエリーのデザイン画から少年時代の授業中にノートや教科書の隅に描いたスケッチまで非常に整理された状態で保管しています。上記の名作ジュエリーの製作についても当時の日記などを見ながら説明してくれました。こういった当時の貴重な記録をしっかりと残してきたことが皆様に安心して”本物”のジュエリーをお求めいただける一助になれば幸いです。

それにしても彼のスケッチはどれも素晴らしくクール!いつかTシャツだけでなく、その他のカタチでも発表出来たらいいな、などと思っております。

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